吾作さん曰く、
二ヶ月ほど前よりどこから来たのかここに住み着いているアヒル12羽らしい。毎日決まった時間に吾作さんが、いろいろな食べ物を持ってきて餌として与えている。その時間帯が今の時間らしい。・・・追い払ったことは内緒にしておこう・・・
アヒルたちは、恐る恐るといった動作でこちらへ近づいて来る、私は少し後ろのほうで腰をおろし目立たないように様子をうかがった。
さて、五作さんがナイロン袋から取り出したもの、それはドッグフードだった。
アヒルがドッグフード食べるのかなと見ていると、アヒルたちは私の事を気にしながらも、地面に蒔かれた餌をせわしなく食べ始めたが、五作さんが手のひらに載せた餌を食べさせようとしても、私のことが気になるのかなかなか近くには寄ってこない。
「なんか今日の連中はへんだな...」吾作さんはしきりと首をひねっている。
「今日は、みだごど無い人いっから警戒してるんだベー。」
「んだがもすんねなー。」
ひとつのナイロン袋が空になって、吾作さんはもうひとつの袋を取り出した。
それはなんと夕べの食事にでも出たのか、焼きカレイであった。それも身がわずかばかり残っているほとんどが骨ばかりのカレイであった。
「アヒルがそんなもの食べるの」と聞きたかったのですが、「ほーれ、ほーれうまいぞ」吾作さんは目を細め食べさせようとしましたが、案の定、見向きもされませんでした。暫くの間世間話をし、吾作さんが帰っていったあとには、カレイの骨だけが残り、アヒルたちはさわがしく対岸へと引き上げていった。 |